【希有馬屋フリートーク#1 井上純弌 「聞くだけで上手くなるエロ&萌え絵講座」】@代官山 ”山羊に、聴く?”
井上純弌さんは「中国嫁日記」で2010年ブログアワード受賞。
同ブログは最近書籍化もされ、いま非常に勢いのある人です。
同人制作に長期間携わり、売れない時期も長かったと聞きます。
売れる、と、売れないの両方を知った人のナマの話しは、サービスorコンテンツ制作者にとって、非常に有益と感じ、参加してきました。
以下、その講演のメモ。
***
売れたのは嬉しいけど、煩わされるは無意識の売れたくない病
面白い↔面白くない
売れる↔売れない
…これらに相関関係はない
…こうすれば解決という結論もない
知人の編集者のサトミさんにどうすれば良いかを聴くも
売れたくない病は意識しても治らないので良い加減なことは言いたくない。
(対:あずまきよひこさんのみに責任をもつプロフェッショナル)
同人誌ってなんだ?
10年以上やり続けている。
エロ/萌えは同じ(違いは「強弱」のみ)
言うなれば、痛さと辛さの違いのようなもの。
10万部売れることと1万部売れることは別次元。
→言っていることは同じでも、発言の影響力が違う。
※言ってる人も同じ、言っている内容も同じ。
それでも売れている部数の大小で相手に通じたり通じなかったりする。
意識的な売れたくない病というものもある:売れるような漫画は書きたくない。
TRPG(テーブルトークRPG)
いかに多くの人に遊んでもらえるかを意識して同時活動をしていた。
一番売れているTRPG「SwordWorld」30万部
書籍「中国嫁日記」20万部
→マーケットの大きさで影響力は違う。
漫画作品例から…
「ひまわり」:ネームをけなされるのが辛くて書ききれない
「バングラディッシュで玉の輿」:面白いのに売れない、照れが見える
「ダーリンは外国人」:売れへの照れが無い、これは才能
「セーラームーン」:売れへの照れがとにかく無い
井上さんは「自意識の肥大している人を観察するのが好き」「自分のできない事をやってくれる、自分は追体験できる」
売れたくない病で仕事すると…
小賢しいことをする:分析してウケたことを繰り返そうとする。
これを防ぐためには…
参考例:相撲
「瞬間の競技のため、立会の時間しか戦略を考えられない。同じ手の反復は通用しない。
なので、勝負時は無意識にする。」
評論をすると基本的には売れない。
町山さんは映画評論以上にクリエーターとして自分を売れている。
映画評論を材料に、それを語れる自分をコンテンツとして確立している。
脳と分析「ユングとフロイト」
主観が一番面白い!
心理分析は事象の積み重ね、それ自体はつまらないもの…。
歴史=勝者の主観だから面白い!
<講座>
ネタ本「本気の漫画術」
レンズの種類:広角・標準・望遠
※望遠の世界には歪みはない
士郎正宗さん
→人間は望遠・背景は広角
遠近感
アダルトビデオは広角レンズ(男性を小さく見せる
→迫力あるが、冷静にさせてしまう
客観性があるために馬鹿っぽい
(絵が上手いために…という例はある)
望遠
距離が近くなる
絵が下手でも誤魔化せる
ドラマ「HERO」
基本円形レンズ
クライマックスはずっとアップ=パースを殺すことで親近感を沸かせる
押井守さんはスパイ(見られてる感を)出すときは、魚眼レンズ使用
その観察者の視点で見れる
ボルゼさん
同人誌売り手、構図はいつも同じ。パースを排してエロさを引き出す。
エロさはすなわち望遠
ネタ本「萌え絵の教科書」
→パースの話は一切ない
アイドルマスター然り、3Dパースを与えると萌えの認識ができなくなる
江戸時代の春画=望遠
西洋画技法もあったがエロには導入せず。
エロ絵ってなんだ!?
エロに正解はあるのか。
DVD「一人ごっつ」
第一話にてまっちゃん曰く”お笑いには正解があると思うねん…”
井上さん:エロにも正解があると思う。
コミケ会場の熱然り、そこに集まる訳がある。
過去の作品を辿ると…
「マクロス」
…今見ると絵が変だが、当時はまさに求めていたアニメはこれだ!という感覚が確かにあった。
「センチメンタルグラフティ」
…10万本のヒットゲーム、今見るとパースがおかしい。当時は模写していたくらい正確と感じていたはず。
「特攻の拓」
…不良が出てくるとリアル
ヒーローは望遠。
→これは不良は他者(敵)として認識させる客観性を与えるため。
どちらが正しい?
・今の自分たちが見た過去の作品評
・当時のファンの作品評
→当時のファンが正しい!萌えは歪むもの。
時代ごとに正解がある。
→コンテンツの当たりは時代性に左右される。
今買っている欲しくてしょうがないものは、10年後には価値がなくなるよ。
または、今と違う目でそれを観るようになるよ。
ちゃんとした絵は時代を超えた萌えの正解となりうるか?
→No。それは客観的なものになってしまう。萌えはあくまでも主観。
AVパッケージを見比べて…
1980年代のアダルトビデオはやや怖い、ださい。
2000年代になると、少し見慣れたものになっている。
なぜ?
→女性のスタイルが良くなったから?
答え:化粧と照明のせい。進化したりはしない、素材は同じ。
その時代では、その「化粧と照明」がベストパターンだった。
なぜエロには今しかないのか。
→今一番良い雌を求めているから。
狩猟生活・農耕生活・現代社会への変遷
3〜5年のパートナーシップ。
消費対象に対して…
消費者が半年単位で変わるのが、女性の描き手
消費者が3年くらい付き合ってくれるのは、男性の描き手
→パートナーシップ
漫画家の先駆者の先生方には既得権益がある。
書きためたもの、ノウハウ的な意味で。
※ただしエロは除く、それは生鮮食品だから。
次に現れるものは消費される。
エロ萌えは常に最大効率、その瞬間に金儲けに直結。
この時間にしかないものを買う。
→今一番売れているものから技巧をパクるのは有効。
フィギュアは8,000〜10,000円相当するが3年もたない。
ただ、フィギュアの人気には例外はある。
プレミアフィギュア、リアル系はプレミアが付くことも。
例外①:投機的価値のあるもの。
キャラクターは生き残る=ずっとお金を稼ぎ続ける。
※仮面ライダー、ガンダム、ウルトラマン…
→将来になってから買えないものが価値が出る。
例外②:何度もリメイクされるもの。
※戦艦ヤマト
例外③:商品価値の高いもの
※連合艦隊(シリーズもの、切り分けたら価値がないようなもの)
村上隆さん
「芸術は消費される」
アンディ・ウォーホル
→キャラクターになったから売れた。
強烈なキャラクターの価値
小池一夫さん「劇画村塾」での教え
→キャラクター(人格)を立てること!
漫画:「アバンチェリエ」
原作は100年以上前の小説
現代版でも大幅な脚色はしていない
→これがキャラクターのもつ普遍性
石ノ森章太郎
SFの大好きなものを収集した。
→当時は変身して強くなるという概念が存在しなかったため、
仮面ライダーの変身の表現に苦心した。
それを成し得てブレイクスルー!
ウルトラマン
→銀色の巨人が僕らの味方だと認知させるまでの過程が困難。
円谷プロの特撮技術があってこその。
映画:「マトリクス」
3D拡張現実のイメージを感観客に植えつけた。
映画:「インセプション」
拡張現実に対してマトリクスの下地があってこそ大衆に受け入れられる。
「中国嫁日記」
中国人とはこういうものだ?を見えるように。
先駆者コンテンツは、「ダーリンは外国人」(国際結婚)
→もや〜と漠然としたものに形(またはキャラクター)を与える。
ヒットコンテンツのキーポイント!
①今までにないものを創りだす。
②漠然とみんなが思っていることを形にする。
エヴァンゲリヲン
画期的なこと。
・ロボットにオカルト要素を持ち込んだ
・アニメにエロさを取り入れた(過去にも試みはあったが成功例としては無かった
→エロ・バイオレンス・食欲、の描写は魅せられる
宮崎駿さん
「自らの半径5m以内に目を向けよ」
→もや〜としたものに形を与えるコツはこれ。
小田空さん
→中国を漫画描写、しかし対象が広すぎる。
中国嫁日記では中国人を描く
キャラクターとして認識させることで勝負。
みんなの知らないものに形を与える他の例
奇襲的なものもある:
ノストラダムスの予言、一発芸人ネタ
ただしこれは反発も招きうる。
まとめ:ヒットコンテンツのために大事なこと
・今までにない新しいものを生み出す、ブレイクスルーを起こす
・半径5m以内のモヤモヤに形を与える
***
以上です。
2時間あっという間でした。
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